サーバー構築とは?ITインフラの要を創り上げる技術

企業のITシステムの中核を担う「サーバー」。Webサイトの公開、メールの送受信、業務アプリケーションの実行、データ管理など、その役割は多岐にわたります。この重要なサーバーを、要件に合わせて設計し、実際に使える状態に作り上げるのが「サーバー構築」です。

サーバー構築は、単にハードウェアを組み立て、OSをインストールするだけではありません。システムの目的や規模、求められる性能やセキュリティレベルなどを考慮し、最適な構成を検討し、それを実現するための複雑なプロセスを含みます。

サーバー構築の全体像:主要なステップ

サーバー構築は、一般的に以下の主要なステップを経て行われます。

  1. 要件定義: まず、どのような目的でサーバーを利用するのか、必要な機能、性能、可用性、セキュリティ要件などを明確にします。例えば、「Webサイトを公開するためのサーバー」「基幹業務システムを動かすためのサーバー」「ファイル共有を行うためのサーバー」など、用途によって求められるスペックや構成は大きく異なります。
  2. 設計: 要件定義に基づき、具体的なサーバーの構成を決定します。
    • ハードウェア選定: 物理サーバーか仮想サーバーか、CPU、メモリ、ディスク容量、ネットワークインターフェースなどのスペックを選定します。ベンダーや機種の選定も重要です。
    • OS選定: サーバーの用途や互換性を考慮し、最適なOS(Windows Server、各種Linuxディストリビューションなど)を選定します。
    • ネットワーク設計: サーバーをネットワークに接続するためのIPアドレス設計、DNS設定、ルーティング設定などを決定します。
    • セキュリティ設計: ファイアウォールの設定、アクセス制御、暗号化などのセキュリティ対策を検討します。
    • ストレージ設計: データの保存方法(ローカルストレージ、ネットワークストレージ)、RAID構成などを決定します。
    • バックアップ設計: 障害発生時のデータ損失を防ぐためのバックアップ方法やスケジュールを検討します。
  3. 調達: 設計に基づいて、必要なハードウェア、ソフトウェア(OSライセンスなど)を調達します。物理サーバーの場合は、機器の発注やデータセンターへの搬入なども行います。
  4. 構築: 実際にサーバーを組み立て、ソフトウェアをインストールし、設定を行う段階です。
    • ハードウェアセットアップ: 物理サーバーの場合、マザーボード、CPU、メモリ、ディスクなどをケースに組み込み、配線を行います。
    • OSインストール: 選定したOSをサーバーにインストールし、基本的な設定(ホスト名、タイムゾーン、ネットワーク設定など)を行います。
    • ネットワーク設定: IPアドレス、ゲートウェイ、DNSサーバーなどのネットワーク情報を設定します。
    • セキュリティ設定: ファイアウォールの設定、不要なサービスの停止、アクセス制御リストの設定など、セキュリティ対策を実施します。
    • ストレージ設定: ディスクのパーティション分割、ファイルシステム作成、RAID構成の設定などを行います。
    • ミドルウェアインストール・設定: Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバーなど、必要に応じてミドルウェアをインストールし、アプリケーションが動作するように設定を行います。
    • 仮想化基盤構築 (仮想サーバーの場合): ハイパーバイザー(VMware ESXi、Hyper-V、KVMなど)をインストールし、仮想マシンを作成・設定します。
  5. テスト: 構築したサーバーが設計通りに動作するか、必要な機能が実装されているかなどを検証します。
    • 基本動作テスト: サーバーの起動、ネットワーク接続、OSの基本機能などを確認します。
    • 機能テスト: Webサーバーが正しくWebページを配信できるか、データベースサーバーがデータの読み書きを行えるかなど、サーバーの役割に応じた機能が正常に動作するかを確認します。
    • 負荷テスト: 想定されるアクセス数や処理負荷に耐えられるか、パフォーマンスを測定します。
    • セキュリティテスト: 脆弱性診断ツールなどを利用し、セキュリティ上の問題がないかを確認します。
  6. ドキュメント作成: 構築したサーバーの構成、設定内容、運用手順などを詳細なドキュメントとして記録します。これは、今後の運用や保守において非常に重要な情報となります。
  7. 引き渡し・運用開始: テストに合格したサーバーをクライアントに引き渡し、運用を開始します。運用開始後も、パフォーマンス監視やセキュリティアップデートなどのメンテナンスが必要となります。

サーバー構築の種類:物理サーバーと仮想サーバー

サーバー構築には、大きく分けて物理サーバーと仮想サーバーの2種類があります。

  • 物理サーバー構築: 物理的な一台のコンピューターにOSやアプリケーションを直接インストールして利用する形態です。ハードウェアリソースを独占できるため、高いパフォーマンスが期待できます。大規模なシステムや、特定のハードウェア構成が必要な場合に選択されます。
  • 仮想サーバー構築: 1台の物理サーバー上に仮想化技術を用いて複数の仮想的なサーバー(仮想マシン)を作成し、それぞれにOSやアプリケーションをインストールして利用する形態です。物理リソースを効率的に活用でき、柔軟なリソース割り当てや管理が可能です。現在では、多くのシステムで仮想サーバーが採用されています。

クラウドサーバーの構築

近年では、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) などのクラウドプラットフォーム上でサーバーを構築するケースも増えています。クラウドサーバー構築では、物理的なハードウェアの準備や管理が不要で、WebインターフェースやAPIを通じて簡単にサーバーリソースをプロビジョニング(作成・割り当て)できます。スケーラビリティや可用性に優れており、従量課金制でコスト効率も高いのが特徴です。

サーバー構築に必要なスキル

サーバー構築には、幅広い知識と技術が求められます。

  • ハードウェアに関する知識: サーバーの構成要素、RAID、ネットワークインターフェースなど。
  • OSに関する知識: Windows Server、Linux(CentOS、Ubuntuなど)のインストール、設定、コマンド操作。
  • ネットワークに関する知識: TCP/IP、DNS、DHCP、ルーティング、ファイアウォールなど。
  • セキュリティに関する知識: 脆弱性対策、アクセス制御、暗号化、セキュリティポリシーなど。
  • 仮想化技術に関する知識: VMware、Hyper-V、KVMなどの仮想化ソフトウェアの操作、仮想マシンの作成・管理。
  • クラウド技術に関する知識: AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォームの利用、各種サービスの設定。
  • スクリプト言語の知識: Shell Script、Pythonなどで自動化スクリプトを作成できると効率が向上します。
  • ドキュメント作成能力: 構築手順や設定内容を正確に記録する能力。
  • 問題解決能力: 構築中に発生した問題の原因を特定し、解決するための論理的な思考力。

まとめ

サーバー構築は、ITシステムの基盤を支える重要な技術であり、インフラエンジニアの主要な業務の一つです。要件定義から設計、構築、テスト、運用開始まで、多岐にわたるステップと専門知識が求められます。

物理サーバー、仮想サーバー、クラウドサーバーなど、様々な形態があり、それぞれの特性を理解し、最適な方法を選択する必要があります。

サーバー構築のスキルは、ITエンジニアとしての市場価値を高める上で非常に重要です。

常に新しい技術を学び続け実践的な経験を積むことでより高度なサーバー構築スキルを習得し、企業のITインフラを支えるプロフェッショナルとして活躍できるでしょう。